thebluecastle

ちょっと魔法でばんそうこ

ジジ

音が聞こえる。心臓が動くかぎりあなたは頭を左右に動かす、目線を動かす。心臓が動くかぎりその大きなまんまるい目を私に向ける、高い声で鳴く、寝言を言う。私を怖がって飛んでゆく、そのかわいいあんよでよたよた歩く。羽をふくらませてまんまるいフォルムを作る。その心臓が愛しい

19日の朝に


考えてみれば根拠のない自信で
(否 自信とはもとよりそういうものだが)

どこかと慌てて探してみても
あなたは動かなかった

触ればよそよそと手を避けたのに今日のあなたはそうしなかった

首は曲がり羽は動かず
目は皮肉にも今までにないほど穏やかに閉じられて
規則正しく刻んでいたリズムはもう聞こえなかった

全身を流れていた血は止まって足の血管は見えなくなった


きれいなくちばし


あなたはよく研いでいた


ごめんなさい と ありがとう
が同じくらい


彼女は言う
鳥くらい...

わたしにとっては愛しい人(鳥)

またひとつ(皮肉にもわたしは)学ぶ


死ぬとはこういうことなのか と思う
生命 がなくなるとは
こういうことなのか






血は止まっても
あなたの毛色はこれ以上ないほどに美しい


かわいいあんよの爪に透けて見えた血の通り道はもう見えない

そのかわいい鳴き声も

はねをふくらませ温もりを作り出していたあなたも

一日にたくさんうんちしたあなたも

ひまわりの種が好きでそればかり食べていたあなたも

シャワーを
近くでは怖がっていたのに
それの浴室床(よくしつゆか)の水の跳ね返りの音には反応したあなた


悲しくも、わたしは幾分 冷静だった


あなたの体を観察する余裕があるほどに

悲しい感情とそれとは区別していたのだ




穏やかに閉じられていると思っていた目は
黒目がなくなっていただけだった

すでに腐敗が始まっているのかしら...


力なく垂れる頭





見つけた瞬間は
動いてよ
と思った



そして悟った
もう動かないということを
早く受け入れようという意識が働いた
現実を早く受け入れようと

そして謝った


いま掌にのるあなたの重さは
内臓の分だけなのね



もう腐敗が進んでる




傾けた首は

もとに戻らない



美しいあなた
美しい
うつくしい
うつくしい







(愛しいキキ)

夜の電灯のなかの公園
ブランコ
11月の7日
息切れ
走った
地面に膝をついた
自転車の通り道のあの、鮮烈な香り
あなたが通った
立ち漕ぎをして緩やかな坂を登る
長い髪
車道の左右を確認して渡る
コンビニの明かり
公園のおばさん
犬の散歩
めがね
水色のカシミアセーターを羽織って
2度目の失敗が許せなかった
津波のように押し寄せてきた感情たち
理論と本能が対立
冷静ではなかった
でも間違いでもない

I know

しんみりしたのは嫌で
必死に逃げようとする
でも、隠しきれない

初めてぶつけたそれは
今は粉々に崩れて届かなかった

しばらくかかって1ヶ月と1週間
たぶん、大丈夫

言葉じゃなくてメロディー

歌い方が嫌いなのに
核心をついてくる彼の曲を聴きながら
内側と向き合って

全然冷静じゃなかった
わかってる
全然余裕がなかった
わかってる
現実的じゃなかったって
でも誰が責められる?


どうすれば帰れるのか、
分からなかったのは初めて
大袈裟だとは思ったけど
しっかり立っていられなかった

これにピッタリのメロディを頂戴、
狂おしいほどのメロディってやつを。